Threadsで、ある買い物客がこんな投稿をした。「自分の購入履歴をもとにAmazonが立てた『推測』のページを見つけてしまった。言葉が出ない」。
投稿は一気に広まった。多くの人が同じ気持ちになったのだ。買ったものをAmazonが記録していることは知っていた。
しかし、その記録を「自分がどんな人間か」という結論に変えていることまでは知らなかった。
彼女が見つけたのは、情報漏えいでも不具合でもない。Amazonのアカウント設定や広告設定にある、ごく普通のページだ。ほとんどの利用者は一度も開いたことがない。
この記事のポイント
- Amazonの広告設定では、アカウントに結びついた興味のカテゴリーなどのラベルが見られることがある。
- 購入、検索、閲覧、似たような買い物客の行動が、ラベルのもとになりうる。
- 「flat buttocks(平らなお尻)」のようなラベルは、体の事実というより購買行動のまとまりを指している場合がある。
- プロフィールは間違いも多い。贈り物、共有アカウント、1回きりの買い物でゆがむ。
- パーソナライズ広告をオフにしても、変わるのは表示であり、収集まで止まるとは限らない。
- 地域によっては、自分のデータの写しを請求できる。設定ページより多くのことが分かる場合がある。
なぜ1枚の設定ページが波紋を呼んだのか
多くの人は、小売店のデータについて単純なイメージを持っている。店は何を買ったかを知っていて、似た商品をすすめてくる。便利さの対価としては妥当だと感じる。
設定ページは、このイメージを壊す。
並んでいるのは購入履歴だけではない。システムが人物につけた興味、特徴、カテゴリーという「解釈」が表示されている。
Threadsの投稿者が言葉を失ったのは、この違いのせいだ。レシートは取引を記録するだけだ。ラベルは、人についての主張になる。
自分のページを確認した人たちの反応は、さまざまだった。
- 納得:当たっているラベルもあった。気まずいほど当たっていることもあった。
- 戸惑い:なぜそうなるのか分からないラベルもあった。
- 恥ずかしさ:体、健康、人に言いにくい習慣に触れるラベルもあった。
- 不安:こんなふうに描かれることに同意した覚えはない、と感じた人が多かった。
とくに反応が強かったのは、体に関するラベルだ。「flat buttocks」という言葉は、買い物かごの中身を体型への評価に変えてしまう。人がそのつもりで書いたわけではなくても、個人的な指摘のように読める。
ここで、ひとつの問いが浮かぶ。買い物履歴が、気づかないうちに体や習慣や暮らしのプロフィールに変えられているとしたら、どう考えればいいのだろうか。

図2:従来の小売データモデルとAmazonのプロフィール化モデルの比較
Amazonが推測した内容を確認する方法
ラベルがあるのは、注文履歴ではなく、Amazonの広告設定だ。見つけた人が少ない理由のひとつがこれである。
買い物客はレシートを「注文履歴」で探す。広告設定を見に行くことはほとんどない。
メニューの名前や並びは、時期や国によって変わる。以下は大まかな道筋で、必ずたどり着ける道ではない。
パソコンのブラウザの場合
- Amazonのアカウントにサインインする。
- アカウント&リストを開き、アカウントサービスに進む。
- データ、プライバシー、通知設定にあたる項目を探す。
- 広告設定、またはそれに近い名前のページを探す。
- アカウントに結びついた興味、カテゴリー、オーディエンスの一覧がないか見る。
スマホアプリの場合
- アプリを開き、プロフィールまたはメニューのアイコンをタップする。
- アカウントサービスに進む。
- プライバシー、データ、広告に関する設定までスクロールする。
- 広告設定のページを開く。
見つからないときは、AmazonのヘルプでAdvertising Preferences(広告設定)を検索してみよう。ヘルプページは、第三者の解説よりも更新が新しいことが多い。
表示されるかもしれない内容
ページには、次のようなものが混ざって表示されるかもしれない。
| ラベルの種類 | 例 | 考えられるもと |
|---|---|---|
| 商品への興味 | フィットネス用品、インテリア、本 | 購入と閲覧 |
| 暮らしのカテゴリー | ペットの飼い主、旅行好き、料理好き | 繰り返される購入パターン |
| ライフイベント | 引っ越し、赤ちゃんの誕生 | 関連する買い物のまとまり |
| 体や健康に関するラベル | 補整下着、姿勢、体型 | 衣類、健康、パーソナルケア用品 |
当たり障りのない項目もある。驚くような項目もあるかもしれない。
ページには表示されないもの
期待しすぎないほうがいい。画面に出ているのは、もっと大きな仕組みを簡単にした一部だろう。
- すべての信号は出ない:検索語や商品ページの滞在時間など、元データがそのまま見られることはまれだ。
- ラベルは要約かもしれない:短くて読みやすい言葉が、その下にある細かな信号をまとめている可能性がある。
- 理由は分からない:どの購入がどのラベルにつながったのかは、たいてい見えない。
- 対象は広告だけだ:おすすめや価格など、ほかの仕組みがデータをどう使うかは、このページには書かれていない。
ページを確認すれば、本当のことが少し分かる。ただし、すべてが分かるわけではない。
買い物はどうやってプロフィールになるのか
1回の買い物から分かることは、ほとんどない。補整下着を1枚、姿勢矯正ベルトを1本、パッド入りの下着を1枚買っても、弱い手がかりにしかならない。誰でも、どんな理由でも買えるからだ。
推測の仕組みは、1回の購入だけに頼らない。たくさんの弱い手がかりを組み合わせて、強い手がかりに変える。
材料になるもの
小売りのプロファイリングでは、次のような材料がよく使われる。
- 購入:何を、どれくらいの頻度で、いくらで買ったか。
- 閲覧:どのページを、どれくらい長く見たか。
- 検索:検索ボックスに入れた言葉。
- 返品:何を送り返したか。サイズや合うかどうかのヒントになる。
- レビュー:商品について何を書いたか。
- 似た買い物客:似た履歴の人が、その後どう動いたか。
Amazonは、仕組みの全体を公表していない。この一覧は、こうしたシステムが業界で一般的にどう作られているかを示すものだ。Amazonが実際に使う入力を確認した一覧ではない。
パターンを見つける仕組み
ロジックの大部分は、次の2つの手法で説明できる。
協調フィルタリングは、こういう考え方だ。商品Aを買った人の多くが商品Bも買っているなら、Aを買った新しい人もBを欲しがる可能性が高い。AもBも、中身を理解する必要はない。
ルックアライクモデリングは、この考えを広告の対象選びに広げたものだ。広告主は、ある種の服を買いそうな人といった集団を決める。システムは、その集団と行動が似ている別の買い物客を探し出す。
どちらの手法も、あなたの体について本当のことを知る必要はない。必要なのは、あなたと同じものを買う人が、ある種の広告に反応しやすいという事実だけだ。
数式より、ラベルのほうが重い
見落としやすいが、タグの読み方を変える大事な点がある。
「flat buttocks」というラベルは、あなたの体型についての主張ではないかもしれない。特定のジーンズ、パッド入りのショーツ、フィットネス用品といった購入のまとまりに、便宜上つけた名前かもしれない。
エンジニアや広告主が、そのまとまりが予測する商品カテゴリーにちなんで名づけた可能性がある。
とはいえ、統計だからといって無害になるわけではない。
- ラベルは保存される。
- ラベルはアカウントに結びつけられる。
- ラベルは、表示される内容に影響する。
- ラベルは、自分自身についての説明として読めてしまう。
こうして、相関が人物像に固まっていく。計算そのものはありふれている。それでも出力が人間の言葉で書かれ、名前のある人に結びつくと、ぐっと身近で踏み込んだものに感じられる。
同じ仕組みが、便利な結果と不穏な結果の両方を生む。スマホに合う充電器を教えてくれる。一方で、あなたの体について意見を持ったかのように見えることもある。
プロフィールが外れているとき、当たりすぎているとき
設定ページを確認した人の多くが、自分に合わないラベルを見つけた。驚くことではない。こうしたシステムに入るデータは、雑多で散らかっているからだ。
よくある間違いのもと
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 贈り物を買う | 他人のサイズ、年齢、興味がプロフィールに入り込む |
| 家族で共有するアカウント | 複数の人の習慣が1つの人物像に混ざる |
| 1回きりの買い物 | たまたまの購入が、ずっと続く特徴として扱われる |
| 興味本位の閲覧 | 見ただけなのに、欲しい証拠になる |
| 仕事や趣味のための買い物 | 仕事上の必要が、個人的なものと読まれる |
贈り物の痕跡は、長く残ることがある。友人のためにマタニティウェアを買えば、数週間はベビー用品が表示されるかもしれない。冗談で補整下着を贈れば、体に関するラベルが設定に現れるかもしれない。
2種類の傷つき方
間違ったラベルと正しいラベルでは、居心地の悪さの種類が違う。
同意なしに、正確に言い当てられる場合:ラベルは合っている。
しかし、その事実を共有すると決めたのは自分ではない。隠しておいたことを、小売店が見抜いてしまった。問題は間違いではなく、許可していない開示のほうだ。
間違ったまま、狙われ続ける場合:ラベルは外れている。
それでも広告やおすすめは、そのラベルについてくる。自分ではない誰かに向けた商品を見せられ続ける。腹が立つし、ときには傷つく。
どちらの傷つきも、話題が繊細なほど大きくなる。
繊細なカテゴリーで、なぜ重くなるのか
台所用品の好みを外されても、被害はほとんどない。次の分野での推測は話が違う。
- 体のイメージ:体型に関するラベルは、体について複雑な思いを抱える人にはこたえる。
- 健康:購入履歴から、人に知られたくない病気が推測されることもある。
- 妊娠・不妊:本人が打ち明ける準備のできる前に、知らせが表に出てしまうことがある。流産などを経験したあとなら、つらさを生むこともある。
- 年齢・人生の段階:ラベルが、見下しているように、あるいは決めつけているように感じられることがある。
一般的な買い物アルゴリズムは、クリックや購入を予測するために作られている。感情への影響を考えることは、その目的に含まれていない。
設計者が特別な安全策を入れなければ、システムは体に関するラベルを、好きなお菓子のラベルとほぼ同じように扱う。
システムが最適化しているものと、人が大切にするものとのずれ。反発の多くは、ここから来ている。
実際に変えられること
ある程度は自分で変えられる。ただし限りがある。プロフィールを隠すだけの道具と、消せるかもしれない道具を分けて知っておくといい。

図10:パーソナライズド広告オプトアウトの実際の効果範囲(Amazonプライバシー設定仕様に基づく)
主な選択肢
| 操作 | できること | おそらくできないこと |
|---|---|---|
| パーソナライズ広告をオフにする | Amazon内外の興味に基づく広告が減る | データ収集を止める、すでにある推測を消す |
| 閲覧履歴を消す | 見た商品が履歴から消える | 過去の購入や、すでに使われた信号を消す |
| おすすめの対象から商品を除外する | 特定の購入をおすすめに使わないよう伝える | その購入を記録から消す |
| 別のアカウントを使う | 繊細な買い物を、メインのプロフィールから離せる | 支払い方法や住所から、Amazonがアカウントを結びつけるのを防ぐ |
| 個人データの開示を請求する | 法律で認められていれば、Amazonが持つデータの写しがもらえる | それだけでは何も削除されない |
隠すことと消すことは別
興味に基づく広告をオフにすると、通常は表示が変わる。収集されるものは変わらない。
目に見える影響が薄れたあとも、推測は裏で続いている可能性がある。
スピーカーのプラグを抜くのではなく、音量を下げるようなものだ。広告は静かになるかもしれない。その下にあるデータは、残るかもしれない。
個人の行動には限りがある
こうしたシステムは、全体の行動で動いている。あなたの選択は、何百万もの入力のひとつにすぎない。
自分の履歴をきれいにしても、モデルはあなたに似たほかの人から学び続ける。新しい買い物をすれば、またどこかのまとまりに入れられるかもしれない。
だからといって、個人の対策が無意味なわけではない。目に触れる機会は減らせるが、なくすことはできない、ということだ。
法的な権利なら、さらに踏み込める
地域によっては、プライバシー法が設定ページよりも強い手段を与えてくれる。
- アクセス:個人データの全体の写しを請求できる場合がある。
- 訂正:法律によっては、誤った情報を直せる。
- 削除:例外はあるが、データの消去を求められる法律もある。
- 異議申し立て:特定のプロファイリングやターゲティング広告に異議を唱えられる法律もある。
どの権利が使えるかは、住んでいる場所による。欧州連合、英国、米国の一部の州は、ほかの多くの地域より規則が厳しい。
Amazonは、プライバシーまたはヘルプのページに、データ請求の手続きを用意している。回答までの時間やデータの形式は、さまざまだ。
データ請求をすれば、広告設定ページよりずっと多くのことが分かるかもしれない。アカウントがどう見られているかを知る、いちばん確かな手段になりうる。
やってみる価値のある5つの手順
- 今日、広告設定のページを確認する。何を変えるか決める前に、どんなラベルがついているかを見る。
- ラベルが気になるなら、パーソナライズ広告をオフにする。プロフィールは消えないが、追いかけてくる頻度は減る。
- 贈り物や繊細な買い物は、おすすめの対象から除外する。買ってすぐ、信号がプロフィールに定着する前に行う。
- 地域の法律で認められているなら、データの写しを請求する。設定ページと見比べて、どれだけ表示されていないかを確かめる。
- 本当に知られたくない買い物は、メインのアカウントから離す。別の小売店や、家族のアカウントを使うことも考えよう。
ちょっと立ち止まって
Threadsの投稿者の反応は、大げさではなかった。カートに入れたものからシステムがどれだけ推測できるのかを、おそらく初めて目にした人として、自然な反応だった。
小売店、プラットフォーム、データブローカーが作るプロフィールの大半は、見えないままだ。Amazonの設定ページは、その作業のごく一部を見える形にした。
そして、見えたからこそ人々は不安になった。この話の珍しい点は、そのページが存在していることなのだ。
本当の透明性は、ラベルを並べるだけでは終わらない。それぞれのラベルがどう作られたのかを説明するだろう。
繊細なカテゴリーが推測されたときには、そう知らせるだろう。プロフィールを、ミュートするだけでなく削除させてくれるだろう。
それまでは、設定ページは変な角度で持った鏡のようなものだ。
映っているのは本当のことだが、あなたの体のことではない。ありふれた選択が、いかに簡単に、他人が語るあなたの物語になってしまうか。それが映っている。
この話は、あなたのどんな思い込みを揺さぶっただろうか。買い物履歴は自分と小売店のあいだだけの話だという思い込みか。それとも、企業が自分について知っていることは意外と少ないという思い込みか。
次にカートに何かを入れるとき、システムがすでに「あなたがどんな人か」の結論を出しつつあると考えたら、何が変わるだろうか。

図12:地域別プライバシー法の適用状況とデータアクセス権の比較(出典:各国・地域のプライバシー法規制情報、GDPR、CCPA、DPA 2018、PIPEDA、Privacy Act、個人情報保護法に基づく)